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バナナの郷・旗山を訪ねる

『な〜るほど・ザ・台湾』観光最新情報 2005年11月号掲載

かつてはバナナの産地として知られた旗山は、高雄県中部の小さな町。
その町並みには古きよき時代の雰囲気が漂う。
高雄から1時間あまり。バスで行く小さな旅に出かけよう。

高雄県旗山鎮。ここはかつて蕃薯寮と呼ばれていた。市街地は楠梓渓によって形成された段丘上に開けており、人口は約4万。古くはサトウキビの栽培で知られ、戦後はバナナの栽培で名を馳せた。国際競争力の低下から両産業とも往事の勢いはないが、町を少し離れれば、今もなお一面に広がるバナナ畑を目にすることができる。

 バスは町はずれのターミナルに到着する。道のりは1時間あまり。本数は多く便利だ。バスを降りたら、まずは旗山駅跡を訪れよう。鉄道は1982年に廃止されているが、駅舎は今も町のシンボルだ。現在は保存が決まり、修復工事が行われている。

 駅からのびる中山路はこの町のメインストリート。駅付近には昔ながらの雑貨屋が残り、石組みの亭仔脚(台湾式アーケード)が当時の姿を保っている。その一部は喫茶店になっているので、ここで散歩前の一服を楽しむのもいいだろう。

 中山路にはバロック風の装飾が施された商店建築が続いている。これらは「看板建築」と呼ばれるもので、台湾では昭和時代に入ったころに多く建てられた。赤煉瓦の落ち着いた色合いが瀟洒なデザインと融合し、独特なたたずまいとなっている。

 天后宮付近には味自慢の屋台がひしめいているので注目だ。いずれも小さな店構えで、お世辞にもきれいとはいえないが、それだけに味は確か。次から次へと地元の人々がやってくる。土地に根ざした味覚を楽しむなら、ここは避けて通れないスポットだ。

 旗山武徳殿も訪れておきたい。ここは日本統治時代の武徳殿(武道教練場)として建てられた。現在、台湾では歴史建築を有効利用しようという動きが年々強まっているが、ここもその一環で、カフェとして生まれ変わった。火災で焼け落ちてしまったという屋根の部分には透明なガラス版があてがわれており、やや奇妙な外観となっているが、建物を保存していこうとする人々の熱意は伝わってくる。

 武徳殿の背後に広がる中山公園は、終戦までは「鼓山公園」と呼ばれていた。ここは旗山神社が鎮座した場所で、山全体が神苑とされていた。現在は石灯籠が一部残っているだけで往事を偲ぶことはできないが、第5代台湾総督佐久間左馬太が揮毫した石碑が残っている。

 公園の散策を終えたら中山路に戻ろう。80年続いているという「枝仔氷城」は旗山名物のデザート店。都会へ出て行った人々は、故郷に戻ると必ずここのアイスキャンディーを食べるという。オーナーはより美味しいデザートの開発に余念がないが、実は郷土史研究家としても知られた存在。店では建築マップやペーパークラフトも販売しているので、おみやげ探しも楽しい。

 著名な観光物件はないが、旗山には田舎町ならではの風情が残っている。観光コースから少し離れ、地方の良さに触れる旅はいかがだろうか。

製糖鉄道の小さな駅舎
駅舎はまるでおとぎ話しに出てきそうな建物である。鉄道は台湾製糖株式会社によって敷設され、高雄の九曲堂と美濃の竹頭角間、39・4キロを結んでいた。ちなみに、九曲堂から旗山までの所要時間は2時間。時速にして20キロにも満たないのんびりとした走りだった。

旗山でデザート三昧
枝仔氷城(中山路109号・07-661-2066)では数々のオリジナルデザートが食べられる。おすすめは芋仔聖代(タロイモサンデー・55元)。香蕉雪○(バナナキャンディー・20元)も名物。終日多くのファンで賑わう人気店だ。
(○=米へんに羔)

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