第5回:キャンパスは市民に人気の散策コース
The Daily NNA【台湾版】 2007.8.31掲載
椰子並木が自慢の旧台北帝國大学。現在、校舎群は台北市が定める古蹟となっている。ここで夕涼みするのを日課とする住民も少なくはない。
国立台湾大学は言うまでもなく、台湾の最高学府である。その前身は旧台北帝国大学で、開学は1928(昭和3)年。「南進する帝国の学問的先鋒」という位置づけで設けられた学校である。広大な敷地を必要とするため、当時は一面に水田が広がっていたという富田町(現公館地区)が選ばれた。ちなみに、開学当初、この学校は国内随一の広さを誇っていた。
構内は南国らしい濃い緑で覆われ、憩いの場となっている。開学時に植えられたという大王椰子は70年の歳月を経て、天を突くような勢いでのびている。この椰子並木は正門から新造された図書館まで続いており、「椰林大道」と呼ばれている。沿道に植えられたツツジの花も美しい。
校舎群はいずれも重厚な雰囲気をまとっている。中でも旧文政学部や旧図書館は風格を漂わせた建物が健在だ。また、正門に置かれた守衛室も威厳を感じさせている。これらの建物は台湾総督府技師井手薫の手によるものである。いずれも落ち着いた色合いが印象的な建物だが、中には行政大楼(旧台湾総督府台北高等農林学校)のように、赤煉瓦に黒瓦を抱いた独特な造りのものもある。
構内は基本的に開放されており、南国情緒にひたりながらの散策が楽しめる。特に黄昏時を迎えると、身体を動かしにやってくる人々でちょっとした賑わいとなる。購買部では特製ヨーグルトなども売られているので、木陰で休んでみるのもいいだろう。知られざる名散策コースである。