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 ブログ 片倉佳史の台湾体験

2020年2月23日(日曜日)

地下にあったもう一つの国〜パイワン族の地底伝説

地下にあったもう一つの国〜高砂族の伝説

台湾の原住民族はそれぞれが個性的な伝承・伝説を持っています。
私は足掛け15年、こういった昔話を取材してきました。

これはパイワン族に伝わるお話で、
台東県に暮らす東部パイワン族の間では「サルムッジの話」として知られています。
東部パイワン族では広く伝わっている伝承ですが、
私は台東県太麻里郷の海の見える小さな村でこのお話を聞きました。
 

その昔、今となってはどこのことなのかは不明ですが、
中央山脈の奥深い場所に「ムリ」という名の集落があったそうです。
ここにサルムッジという名のおばあさんがいました。噂によれば120歳。
すでに100年間は確実に生きていると言いますから、
本当は何歳なのか、それは本人を含めて誰にもわからなかったそうです。

このおばあさんは立って行動することはほとんどなかったと言います。
終日、室内に黙って座っているばかり。しかも、少しも動きませんし、食事もしません。
トイレにすら行かないから不思議です。

何も話さず、とりたてて面倒なお願い事をしてくるわけでもないので、
家族も徐々に関心が薄くなり、家の片隅におばあさんを置いて、放っておくようになりました。

実はこの時代、長生きするのはごく普通のことだったそうで、
死ぬというのは戦さの時にだけ起こるものでした。
つまり、老衰死や病死は存在していなかったのです。
人々は年をとって動けなくなると、
誰もがこのおばあさんのように家の片隅にぽんと置かれていたのです。

しかし、ある日のこと。
おばあさんは突然立ち上がり、ユラユラと部屋から出てきました。
そして、人々を集めると、か細い声で、こう言ったそうです。

「これから私は地中にあるスルムという国に行ってくる。
もし、5日して戻ってこなかったら、スルムは良いところだということ。
もう二度とここに戻らないだろう」

そう言い残すと、おばあさんは庭にあった穴に入り、
地中へ向かっていったそうです。

それから5日が経ちました。
そして、おばあさんが戻ってくることはありませんでした。

日頃はおばあさんに無関心だった村人ですが、
口々に「スルムの国はどんなところなんだろう?きっと良いところに違いない」と言い出しました。

そして、男も女も、老いも若きも、そこに行こうとする者が続出したと言います。
しかし、その数があまりに多いので、村の生活に支障をきたすようになりました。
まさに、村が始まって以来の大混乱に陥ってしまいました。

そこで長老たちは会議を開き、一つの案を決定しました。
それはみんなが平等に、年長者から順にスルムの国へ行こうという内容でした。
これなら平等なので、人々も納得しました。

そして、年寄りたちは年齢に従って順番にスルムの国を訪ねていったのだそうです。
そして、決して村に戻ってくることはありませんでした。

地中にあったというスルムの地。これが「死の国」であることは言うまでもありませんね。

(終わり)


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